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不動産オーナーの口座を使い分けて資金管理をラクにする方法|4つの口座で丼勘定を卒業

「満室なのに、お金が残らない」の正体

物件の稼働率は高く、毎月の家賃収入もきちんと入ってきている。管理会社からの送金明細を見ても空室はほとんどない。それなのに、月末に通帳を見ると思ったほどお金が残っていない――そんな経験はありませんか。

原因の多くは、家賃収入もローン返済も固定資産税もプライベートの支出も、すべて1つの口座で管理していることにあります。いわゆる「丼勘定」の状態です。管理会社からの入金口座でそのままローンを返し、修繕費も生活費も同じ口座から引き落とす。これでは本当の手残りがいくらなのか、通帳を見ただけではわかりません。

この問題を解決するシンプルな方法が「口座の使い分け」です。

不動産オーナーが持ちたい4つの口座

口座を目的別に分けると、お金の流れが見えるようになります。おすすめは以下の4つです。

口座役割入出金の例
1. 家賃収入・経費用日々の賃貸経営資金家賃収入の入金、管理費・修繕積立金・ローン返済・固定資産税の支払い
2. 納税用税金のプール消費税・所得税・住民税の積み立てと納付
3. 将来投資用資産拡大の原資次の物件の頭金、大規模修繕の積み立て、リノベーション費用
4. オーナー生活費用個人の生活費個人事業主の生活費引き出し、法人役員の報酬受取

ポイントは、1と2は「今の賃貸経営」に関わるお金、3と4は「将来」に関わるお金、という分け方です。できれば1・2と3・4で別の金融機関にすると、うっかり手をつけてしまうリスクが減ります。

複数物件を所有している場合

物件を3棟、5棟と持っている方は、物件ごとに口座を分けたくなるかもしれません。ただし、口座が増えすぎると管理の手間が逆に増えます。まずは上の4口座を基本とし、家賃収入・経費用口座の中で物件ごとの収支を会計ソフトの「部門管理」や「補助科目」で把握する方が実務的です。

物件数が10棟を超えるような規模になったら、融資を受けている金融機関との関係も考慮して、メインバンクごとに入金口座を分けるケースもあります。

口座を分けるとこんなメリットがある

口座を分ける一番のメリットは、家賃収入・経費用口座の残高がそのまま賃貸経営の手残りに近い数字を示してくれることです。毎月の入金合計が家賃収入、出金合計が経費とローン返済。その差額がプラスなら黒字、マイナスなら赤字と一目でわかります。

ほかにも、こうした利点があります。

  • 確定申告が早く終わる — 事業の入出金だけが記録されるので、会計ソフトへの取り込みがスムーズ
  • 税務調査で困らない — 調査時にはプライベートの支出を見せなくて済む
  • 融資審査に通りやすい — 資金の流れが整理されていると、金融機関からの評価が上がる。追加物件の融資審査で通帳を見せる場面でも好印象
  • 納税で慌てない — 納税用口座にプールしておけば、確定申告の時期に資金不足にならない
  • 大規模修繕に備えられる — 将来投資用口座に毎月積み立てておけば、外壁塗装や屋上防水の時期に慌てない

納税用口座にいくら積み立てるか

不動産経営で見落としがちなのが、消費税と所得税・住民税の準備です。特に課税事業者になっている場合、消費税は赤字の年でもテナントから預かった分を納める必要があります(居住用の家賃は消費税非課税ですが、事務所や店舗、駐車場の賃料は課税対象です)。

事業用賃貸で消費税の課税売上がある場合、ざっくりした積み立て目安はこうなります。

月の税抜賃料収入(課税分)預かる消費税(10%)仕入れ等で払う消費税差引プール額の目安
100万円10万円約2万円約8万円
300万円30万円約6万円約24万円
500万円50万円約10万円約40万円

※簡易課税制度を選択している場合、不動産賃貸業のみなし仕入率は40%です。売上の消費税額の6割がプール目安になります。2割特例を使えるケース(2026年分まで適用可能)では、売上の消費税額の2割が納税額です。

居住用の家賃収入のみの方は消費税の心配はありませんが、所得税と住民税の積み立ては必要です。不動産所得にかかる所得税・住民税の概算は、課税所得の20〜40%程度(所得金額による)です。年間の不動産所得が500万円なら、年間100万〜150万円ほどを納税用口座にプールしておくイメージです。

毎月の家賃収入が確定したタイミングで、家賃収入・経費用口座から納税用口座へ振り替える習慣をつけましょう。年に1回まとめてではなく、毎月こつこつ移すのがコツです。

ローン返済の資金管理

不動産投資では融資を活用している方がほとんどです。ローン返済の引き落としは家賃収入・経費用口座に集約するのが基本ですが、注意しておきたいポイントがあります。

  • 返済額の内訳を把握する — 元金返済分は経費にならず、利息部分のみが経費です。通帳の引き落とし額をそのまま経費と思い込むと、確定申告で利益を過少に申告してしまうリスクがあります
  • 繰上返済の原資は将来投資用口座から — 繰上返済をする場合は、家賃収入・経費用口座ではなく将来投資用口座から充てましょう。日々の経営資金を取り崩すと、突発的な修繕や空室時にキャッシュが足りなくなります
  • 複数の金融機関から借りている場合 — 返済日がバラバラだと残高管理が煩雑になります。月初に当月の返済予定額を一覧にしておくと安心です

個人事業と法人で少し違うところ

個人事業主として不動産を所有している場合、物件のお金=自分のお金なので、生活費用口座への移動は「事業主貸」として記帳するだけで済みます。

一方、不動産管理法人を設立している場合は注意が必要です。将来投資用口座やオーナーの生活費用口座のお金も、あくまで法人の資産です。オーナー個人に移すには役員報酬として毎月定額で支払う「定期同額給与」のルールを守る必要があります。期の途中で金額を変えると、その変更分が経費として認められないケースがあるので、金額の変更は事業年度の開始から3カ月以内に行いましょう。

不動産所得が大きくなってきた段階で法人化を検討する方も多いですが、法人化すると口座の管理ルールも変わります。法人化のタイミングと合わせて口座設計を見直すことをおすすめします。

参考:当事務所の口座運用例

実際に私自身がどう口座を使い分けているか、参考までにお伝えします。

事業用口座(日常の業務) はメガバンクをメインに、サブとしてPayPay銀行を使っています。PayPay銀行を選んだのは、もともとペイジー(Pay-easy)で社会保険料を納付できたのが理由です。今はネット銀行でもペイジーに対応するところが増えており、PayPay銀行のほか、楽天銀行住信SBIネット銀行GMOあおぞらネット銀行などが利用できます。

納税用口座 は、正直なところ私の場合はなくても回っています。利益の規模によっては別口座にする必要はなく、売上・経費用口座の残高で十分まかなえるケースもあります。

将来投資用口座 は、意図的に作ったというよりも、ネット銀行のスマホアプリで預金の引き出しや振替が手軽にできるので、結果的にそういう役割になりました。使い勝手の良さでなんとなく貯まっていく、というのが実情です。

役員報酬の受取口座 は、法人をお持ちの場合は必須です。法人口座(メガバンクやネット銀行)とは別に、個人名義の口座を1つ用意してください。法人と個人のお金を同じ口座で管理するのは絶対に避けましょう。

ちなみに私の法人はメガバンクの法人口座を持っておらず、PayPay銀行の法人口座だけで運用しています。法人のネット銀行はPayPay銀行のほか、あおぞら銀行も使い勝手がいいので、どちらでも問題ありません。

もうひとつ、好みが分かれるかもしれませんが大事だと思っていることがあります。事業をしばらく続けていると、毎月の運転資金はだいたい読めるようになります。残高がマイナスにならないよう気をつけつつ、事業用口座には最低限の残高だけ残して、余裕資金は将来投資用口座に移し、株式で運用するようにしています。

事業家であれフリーランスであれ、自分の時間やお金をどう投資して運用するかは、お金がないうちから考えておくべきです。不動産投資をしている方はその感覚をお持ちだと思いますが、株式市場にもポジションを持っておくと、世の中の企業の動きや経済の流れにさらに敏感になれます。この感覚は、物件の取得判断やリノベーション投資にも必ず役立ちます。

少額でもいいからとにかく始めて、とにかく続ける。ずっとやらないのが一番よくありません。時間を味方につけて複利で増やすという発想を、創業当初から持って20年続ける。これが私の実感として、極めて重要だと考えています。

当事務所のサポート

「口座は分けた方がいいとわかっていても、今さらどう整理すればいいかわからない」という声をよくいただきます。当事務所では、不動産オーナーの物件構成や融資状況に合わせた口座設計のアドバイスから、会計ソフトとの連携設定、物件ごとの収支管理、毎月の資金繰りチェックまでサポートしています。

まずはお気軽にお問い合わせください。現在の通帳と物件一覧をお持ちいただければ、その場で改善ポイントをお伝えします。

不動産の税務、手放してみませんか?

この記事を書いた人

小松 啓

小松 啓

公認会計士・税理士

大分県出身。監査法人でのデューデリジェンス、投資ファンドでの投資実行・モニタリングを経て独立。投資のリターンを最大化するには、税務コストのコントロールが欠かせません。数字の裏側を読む力を活かして、不動産投資家の資産形成をサポートします。

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